生物に送信機やセンサーなどの機械を取り付けて回遊ルートや潜水行動を記録し、その行動や生態について調査研究することを「バイオロギング」といいます。バイオロギングは、クジラ、ウミガメ、海鳥や魚など、数多くの生物で行なわれています。これまで私たちはさまざまな研究機関と協力し、ウミガメに送信機やセンサーを取り付け、その回遊や潜水行動を追跡することで、ウミガメの行動や生態解明に取り組んできました。

ここでは、これまでに行なってきたバイオロギングの事例をご紹介します。

【事例①】:産卵の終わったアオウミガメ2頭
2004年8月17日、国立極地研究所と東京大学海洋研究所と共同で、小笠原海洋センター内の生簀で産卵を終えた雌ガメ2頭に、アルゴス送信機(※)を装着し、小笠原海洋センターのある製氷海岸から放流しました。1頭は9月16日の伊豆諸島神津島付近で送信が途絶えました。もう1頭は、高知から沿岸をさらに南下し、9月24日の九州南部沿岸が最後の送信となりました。

[※アルゴス送信機]
人工衛星によるデータ収集・測位システム。米国とフランスの協力により開発され、1979年以来、様々な回遊生物、漂流物などに装着されています。アルゴスとは、ギリシャ神話に出てくる「100の眼を持つ怪物」のことです。アルゴス送信機を搭載した物体は、最小100mの精度でその位置データが得られます。
※送信機はエポキシ系接着剤で固定されていますが、しばらくすると剥がれ落ちます。

 

【事例②】:アオウミガメの「ミス・チャイナ」
2007年5月、背甲に漢字の朱印をされたアオウミガメが海洋センター前の海岸に上陸しました。その珍しい外見から一時的に生簀で保護し、朱印からこのウミガメの出自を調べたところ、中国で食用として売られていくところを、仏教国の「放生(ほうじょう)」(捕らえた魚や鳥を放してやること)という風習のお陰で命拾いし、尼僧さんたちに助けられて放流されたとのことでした。このウミガメは「ミス・チャイナ」と名付けられ、ひと夏を生簀で過ごし、無事6回の産卵を行ないました。
その後、ハワイのウミガメ研究機関の協力によりアルゴス送信器を装着してから放流し、大東島西北西80kmほどの所を最後に送信は途絶えました。これまでもアオウミガメの追跡調査を行なってきましたが、小笠原からの南下や停滞したことは初めてのことでした。
小笠原のアオウミガメの産卵回遊を解明する上で、非常に貴重なデータとなりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

【事例③】:沖縄生まれ小笠原育ちのタイマイ
沖縄県黒島で1999年に産まれた2頭のタイマイは、2001年に飼育試験のために小笠原へ運ばれてきました。その後は順調に成長し、飼育下においては小笠原の水温でも成長が可能であることがわかりました。
2007年10月16日、小笠原海洋センターで約7年飼育したタイマイ2頭にアルゴス送信機を装着し、父島沖から放流しました。放流後は沖縄方向へは向かわず北上し、東へ向かいました。このままハワイ近海へ行くのかと思われましたが、2頭ともまた西へ戻る傾向を見せながら、それぞれ2008年8月2日、11月23日の送信を最後に、約1年続いた追跡を終えました。