繁殖
12月~5月頃にかけて小笠原で見られるザトウクジラは、ほとんどの場合オスもメスも、交尾、出産、子育てなどの繁殖に関わる目的のために小笠原にやってきます。そのため繁殖に関係した群れを作り、また様々な行動が見られます。群れの大きさは、単独から時には十数頭になることもありますが、永続的なものではなく群れのメンバーや頭数は頻繁に変わります。しかしその中でも、シーズン後半に見かけることが多い親子クジラは、1年近く行動を共にします。

交尾集団】(メーティングポッド)
1頭の雌クジラをめぐって、複数の雄クジラが争うシーンが繰り広げられます。息もあらく、胸ビレや尾ビレで叩いたり、体についているフジツボで他のクジラを傷つけたり、様々な激しい行動が見られます。群れの構成は一時的なものであり、激しい行動の中でオスの優劣が決まってくるらしく、そのうち群れはバラバラになり勝ち残ったものだけが雌クジラを獲得するようです。

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親子クジラ
体長が13~14mもある大人のザトウクジラに比べて、子クジラは約4mと小さく、また体色も乳灰色のため一目瞭然でわかります。生まれたてのものは、体にしわのような線がたくさん見られるのも特徴です。また呼吸間隔も、大人の10~15分に比べて2~3分と短く、ずっと1頭でいるかと思いきや、突然現れる母クジラに驚かされることもあります。この子クジラ、人間の赤ちゃんのヨチヨチ歩きと同じで、まだ色々な行動がおぼつかない様子が多々見られます。例えば、尾ビレを上手にあげることができないのか(これは単に遊んでいるのかもしれませんが)、そのまま横倒しになってしまったり、完全に持ち上げないままツルリンと水に入ってしまったり。そうかと思うと、いきなり跳ねまわったり。母クジラの上でゴロゴロと転がって両胸ビレで水面を叩いたり、浮いたり沈んだりする様子は微笑ましく、春が来たことを感じさせてくれるひとコマです。

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索餌
ザトウクジラの餌になる生物は、主にクリルと呼ばれるオキアミ類の動物プランクトンとニシンやシシャモのような群集性小魚などです。あごから腹にかけてあるプリーツのような畝を大きく膨らまして、海水ごと餌を呑み込み、舌で海水をヒゲの間から押し出して餌をこしとります。中でも、北太平洋のザトウクジラのある食事方法は特徴的で、何頭かのザトウクジラが協力し合うことで知られています。各クジラが順々に潜水し、そのうちの1頭が深いところかららせん状に旋回しながら気泡を出します。上昇していく気泡は筒状のカーテンとなり、その中に閉じ込められた魚を一気にしたから呑み込みます。

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歌をうたうザトウクジラ(オスクジラの繁殖戦略)
多くの鳥のオスが、メスを引き寄せるためや自分の縄張りを示すために盛んにさえずることはよく知られていますが、同じように、オスクジラも水中に響き渡る音を出して存在をアピールします。また、オス同士の間で優位の順番を決めたり、その順位を維持するために出されているとも考えられています。この鳴音は、いくつかの音節が組み合わさった短いフレーズから構成され、似たようなフレーズが集まってテーマを連ね、反復されます。そのため、この複雑な鳴音は「ソング」と呼ばれ、ソングをうたうオスは「シンガー」とよばれています。

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