洋上調査

小笠原における調査は、写真による個体識別、ソングの録音、表皮サンプルの収集の上記3種の方法で行ない、これらを国内外の異なる海域で識別されたID写真やソング、遺伝子物質と比較することにより、海域間の交流の有無、またそれらの交流関係やその頻度を知る手がかりを得ています。調査船で後方からクジラを脅かさぬよう近づき、尾ビレ腹側の模様を個体識別のため写真撮影し、ソングを録音します。クジラが激しい行動をしたあとにはクジラの表皮が海面に浮遊するので、クジラの遺伝子を解析するためにこの表皮を拾い集めます。こうした調査により、クジラの年齢や成長、雌雄、社会構成、妊娠、出産間隔、グループ間の交流、生息数、海洋汚染物質などの情報を得ることができます。これらの情報は、北太平洋全体のザトウクジラの現状を把握する上で重要な基礎的データとなります。

 

データ整理(マッチング)

それぞれの方法で得られたデータは、コンピューター上のデータベースに入力し整理していますが、その前に一番時間が掛かるのはID写真の整理(マッチング)です。まず、同じシーズン内で同じクジラを探し、次には過去の写真の中から探します。この作業では背ビレの写真も用い、どのクジラがどのクジラと何頭の群れにいたなど、詳しい記録をデータベースに入力します。