みなさんこんにちは!
こちらのブログ【けろにあぶろぐ】では、 海洋センタースタッフの目線から、ウミガメ(たまにクジラも?)について気づいたことなどを書き、
みなさまとシェアできればなと思います。
第一回目のタイトルはずばり、、、
「ウミガメの進化を垣間見る」
毎日ウミガメを見ていると彼らのどんな些細なことでも疑問がわいてきます。
本日は水槽掃除中に思い浮かんだ、ウミガメの進化に関するプチ「どうして?」をテーマに進めていきたいと思います。
こちらは水槽掃除中のウミガメたち📸
海洋センターの最年長、アカウミガメの「なっちゃん」も
タイマイの「キイロ」も
水槽掃除の時はなすすべもなく少し首を引っ込めて丸まっていることが多いです。
周りからは「かわいい~」「首が引っ込んでる~」といった声が聞こえてきます。
首が引っ込むイメージがないウミガメのこうした一面は、私たちの目に愛らしく映るのかもしれませんね。ギャップ萌えというやつでしょうか。
しかし、僕はふとおもいました。
なんでウミガメの首って完全に引っ込まないのっ!!??
そこに進化的な背景があるのは確かですが、なぜ固い甲羅の中という防御を捨ててまでこうした体になったのか。
気になって仕方がないので、少し調べてみることにしました。
◆ 初期のウミガメ類・カメ類とは?
調べてわかったことは、どうも初期のウミガメ類も首を甲羅の中にしまっている様子がありません。
白亜紀の海を泳いでいた史上最大のカメ「アルケロン」や、同じ時代に生きた「デスマトケリス」の頭骨はその体と比較して大きく、
骨格も現生のウミガメ類に酷似しています。
このことは彼らが今のウミガメ類と同じような体・形態を持っていたといえるのではないでしょうか。
非常に興味深い点として、2億1000万年前の地層から発見された最古のカメの仲間の一種(ウミガメではなく全体的なカメ類の一種)、「プロガノケリス」の頭が引っ込まなかったということ。
代わりにこのカメの首周りにはギザギザした甲板が発達し、弱点を守る働きをしていたそうです(平山, 2007)。
この「プロガノケリス」よりも1千万年古い時代に生息していたとされる「オドントケリス」もこの平べったい体を見る限り、
甲羅の中に頭が入るスペースはなさそうです。
◆ なぜウミガメは首を甲羅の中に隠さないのか?
となると昔のカメは首が引っこまずに、後になって子孫のカメ類がその能力を獲得したということでしょうか?
Joyce (2015)や平山(1998)はカメが首を引っ込めることが可能になったのは現生カメ類の2大グループ、
「潜頸亜目(ミシシッピアカミミガメやスッポンなど)」そして「曲頸亜目(ヨコクビガメなど)」が出現してからだとしています(曲頸亜目は首を横に曲げることによって首を保護する)。
実は、現生のウミガメは全て「潜頸亜目」に属しており、縁日で有名なアカミミガメも滋養強壮に効果があるとされるスッポンも、大きなくくりで言えばウミガメと同じ仲間ということです。
カメ全体で言えば首の前後は後天的なもので、この2つのグループに分かれてから首が引っ込む能力を獲得した(曲頸亜目では首を曲げる)、というのが現在の説だそう。
ウミガメは生活の場を海へとシフトしたため、首を甲羅に隠す必要がなかったのでしょうか。
たしかに推進力を得るためのヒレと頭部を両方引っ込めていては、甲羅の中に多大なスペースを作らなければなりません。
そうなると流線型の体から遠のいて、水の抵抗が増してしまいます。
いずれにしろ、彼らはこの形態のまま現代まで生き延びており、
「首が引っ込まない」となにか捕食者に対する防御力が下がったような言い方をされますが、
祖先的な形状を残して進化した
ということではないでしょうか?
少しは縮むウミガメの首に、彼らの昔の姿を想像してしまいますね。
参考にした文献
Joyce, W. G. (2015). The origin of turtles: A paleontological perspective: ORIGIN OF TURTLES. Journal of Experimental Zoology Part B: Molecular and Developmental Evolution, 324(3), 181–193. https://doi.org/10.1002/jez.b.22609
亀崎直樹. (2012). ウミガメの自然誌: 産卵と回遊の生物学. 東京大学出版会.
平山廉. (2007). カメのきた道 甲羅に秘められた2億年の生命進化. NHK出版.