なぜ小笠原でアオウミガメの保全活動を行う必要があるのでしょうか?

小笠原では過去にアオウミガメを人が食用に乱獲していた過去があります。
多い時には一年間で3,000頭が捕獲されていました。

1830年に小笠原を捕鯨基地とするために人々が移住してきた当初からウミガメの食用としての利用が始まりました。
冷蔵技術が発達していなかった当時は、ウミガメはたんぱく源として重宝されていました。
缶詰に加工して本州でもウミガメ肉が売られるようになるなど食利用のために捕獲されるウミガメの数は年々増加し、
1876年には3000頭にのぼるウミガメが捕獲されていました。

【グラフ:小笠原諸島におけるアオウミガメの捕獲頭数(東京都水産試験場、1981年に加筆)】

上記のグラフは小笠原諸島におけるアオウミガメの捕獲頭数を示しています。
長年続いた乱獲により小笠原諸島で産卵するアオウミガメの個体数は激減し、その結果捕獲頭数も減っていることがわかります。
戦時中や戦後(アメリカ占領時代)には捕獲頭数は減少し、1994年からは捕獲頭数の制限が設けられています。
このように、小笠原のアオウミガメの個体数の減少には人間活動が大きくかかわっています。

過去と同じ過ちを繰り返さないためにも、
小笠原のアオウミガメを絶滅させないようにすることが私たちの責務であると考えています。


そのために今、海洋センターではモニタリング調査や研究を通して以下のようなことを行っています。

・ウミガメの来遊頭数や捕獲頭数の把握
・生まれてくる赤ちゃんガメ頭数の把握
・卵の食害状況の把握
・危機状況の把握や回避

 

小笠原村では今でも伝統的なウミガメ漁が継続されており、ウミガメ食は島民にとって大切な生活や文化の一部です。
また、ウミガメ漁に関する規則の制定やウミガメの保全活動が功を奏し、
小笠原に繁殖に来るウミガメの数は近年増加傾向にあります(参照:産卵巣数調査)。

小笠原海洋センターでは、
「アオウミガメの種の保全」と「小笠原に根付くウミガメ食文化の継続」の
持続的な両立を目指し活動を行っています。