こちらの記事は前回の【けろにあぶろぐ #2】ウミガメの頭骨を眺める (1/2) の続きです。

ウミガメの頭骨は非常にのっぺりとしています。

そこにはある理由がありました、、、。

 


 

ウミガメの頭骨には「」がありません。

この「」がないことこそが、「そのまんま感」の正体だと僕は考えます。

」とは簡単に言うと、目の横に空いた穴のこと。正式には「側頭窓 (そくとうそう)」といいます。

従来、爬虫類を含む有羊膜類(ゆうようまくるい)はその側頭窓の数により、大きく3つの種類に分けることができます。
※ 遺伝子解析が進んだ現在、この分類法はカメなどの例外がいることからあまり使われていません。

 

 

無弓類(むきゅうるい):両生類から進化し、側頭窓がありません。現在は絶滅したグループです。

単弓類(たんきゅうるい):側頭窓が1つある分類群。このグループが私たち哺乳類へと進化していきました。人では側頭窓が消失しています。

双弓類(そうきゅうるい):側頭窓を2つ持っています。恐竜や鳥類がこのグループに含まれ、実はウミガメを含むカメ類もこの双弓類に含まれます。

 

ではウミガメの頭骨を再度見てみましょう。

 

( ゚д゚) ・・・  (つд⊂)ゴシゴシ  (;゚Д゚) …!?

 

やっぱり「側頭窓」がねぇぇぇぇ!!??

 

双弓類であるはずのウミガメの頭骨には、どこにも穴が見当たりません。
それもそのはず。長い進化のなかで、カメ類はその側頭窓を失いました
この紛らわしい特徴のおかげで、長年生物学者たちは、カメを古代に繫栄した「無弓類」の生き残り、と分類していました。

しかし現在は、体の形態の総合的な比較やミトコンドリアDNAの系統関係を論じた研究などからカメ類は

二次的に側頭窓を失った双弓類」とされています。

 

おねむなアオウミガメのコータくん。あなたも側頭窓がなくて?

なぜ側頭窓が二次的に閉じたのか。
実のところ、まだよくわかっていないようで、咀嚼筋(そしゃくきん)をしまう必要がなくなったなど諸説あります。

いずれにせよ、ウミガメを含むカメ類は「側頭窓」を進化の途中で失い、他の爬虫類と比べて非常にシンプルな頭骨を手に入れたと言えるでしょう。

 

僕が、そしてあの時のお客様が「ウミガメの頭骨はのっぺりしているな」と感じたのは、こうしたカメ類の特異的な進化背景があったからではないでしょうか?

 

甲羅があったり、頭骨が爬虫類としては異質だったり。カメって身近な生物なようで、どこか変わった生き物なんですね。

 

それでは!