【けろにあぶろぐ #7】イルカの骨を眺める ③ ~首の骨~

2022-06-17T15:19:18+09:00

来る日も来る日も雨に降られ、予定が思うように進まない今日この頃。そんな雨をものともしないアオウミガメはこれから産卵のピークを迎え、センタースタッフT.S.も始めて肌に触れて感じるウミガメの生態に驚きが募るばかりです。 さて、「イルカの骨を眺める」コラムも第3回に突入しました。 「もっとウミガメのことも書いてくれ!」 とみなさまの声が聞こえてきそうですが、たまにはこういう記事もいいかなと、半ば自己満足的に記事を書いております。そんなスタッフT.S.ですが、今回もイルカの不思議についてゆるっと書いていきますので、最後までお付き合いいただければ幸いです。 前回の記事はこちら ⇒ 【けろにあぶろぐ #6】イルカの骨を眺める ② ~ヒレの骨~ 生活環境を陸から海へと変えるということは、生物にとって大きなボディプランの改変を余儀なくされ、イルカも例外ではありません。 指の骨の数が哺乳類にしては多いとか(前回記事参照)、頭に脂肪組織が詰まっているとか(前々回記事参照)。 水族館やドルフィンスイムで人気者のイルカですが、フタを開けるとけっこう変わった生き物だなと私は感じます。 そんな風変りなイルカさんですが、首の骨も奇妙な形をしています。 爬虫類であるウミガメを引き合いに出すのもどうかと思いますが、同じ海生動物であるウミガメの首の骨はこんな感じ。 ちなみにウミガメは頸椎が8個あり、人間と比べると1つ多いです。右の写真では5つ見えているので、残り3つは甲羅の中にフィットしています。 想像していたものより長いんじゃないでしょうか。 海洋センターの水槽掃除の時にウミガメたちが首を引っ込めるのも、この長い首のおかげですね。   対して、イルカさん。 右の写真の赤い丸で囲ったところが首の骨。 首短ッッッ! え.... 首短ッッッッッ!(大事なことなので2回言いました) というかなんかもう、「ギュッ」となってて一個の骨みたいになってます。 なのですがイルカも哺乳類の仲間。キリンや人間と同じで、ちゃんと首の骨は7つあります。 第1頸椎~第7頸椎(青字)。第7頸椎の次の骨は第1胸椎(胸の骨)で、肋骨が見える。   鯨類の第1頸椎(環椎)と第2頸椎(軸椎)は癒合していて、1つの骨みたいになってます (Perrin et al., 2017)。頸椎(けいつい)とは首の骨のこと。種によってまちまちですが、第3頸椎まで癒合しているものもいます。第3頸椎から第7頸椎は写真のように、薄っっっすい骨がミルフィーユみたいに連なっています。 ちなみにベルーガ(シロイルカ)やアマゾンカワイルカなどはこの頸椎の癒合が進んでいないため首をタテヨコナナメと、比較的自由に動かすことができます (Goel et al., 2021)。水族館などで体を縦にしながら首だけ飼育員の方を向くベル―ガを見たことがあるかと思いますが、これは首の癒合が進んでいない彼らだから為せる技なのです。 こんな調子で鯨類は、顔の大きさの割に非常に短い首の骨を持っていることが知られています。 大きなクジラも、愛らしいイルカも、首の骨が短いのは鯨類で共通の特徴なのです。   なぜこんなに首が短いのか?   色々文献を読んでいると、「泳ぎやすくなるために進化した」という答えにたどり着きます。 しかし、首が短いのと泳ぎやすいのとどう関係があるのか。   次回のブログではもう少し掘り下げて、ゆるっとお話したいと思います。 ではまた!   参考文献 Goel, A., Shah, A., & Gaikwad, S. (2021). A morphological analysis of the cervical spine of the dolphin. Journal of Craniovertebral Junction and Spine, 12, 72. https://doi.org/10.4103/jcvjs.jcvjs_9_21 Perrin, W. F., Thewissen, J. G. M., & Würsig, B. G. (2017). Encyclopedia of marine mammals (3rd). [...]

【けろにあぶろぐ #7】イルカの骨を眺める ③ ~首の骨~2022-06-17T15:19:18+09:00

新人スタッフ奮闘記(その⑥)

2022-05-31T13:36:50+09:00

みなさんこんにちは! 小笠原海洋センター新人スタッフのしみずです。 小笠原はすっかり夏、半袖でも暑いほどの毎日です。それでも日焼け対策のため長袖で頑張っています! お風呂上がりにはアイスが欠かせず、ダイエットに支障が出そうです。 さて、夏の小笠原といえば、アオウミガメの季節です!!!!! 待ちに待った産卵シーズンが本格化してきました。 産卵シーズンは、私たち海洋センタースタッフにとっては調査シーズンでもあります。 「産卵調査」と「夜間パトロール」を主に実施していますが、今回は産卵調査を中心にお話していきたいと思います。 産卵調査の流れを簡単にご説明します。 まず、車や船で砂浜に行き、カメの足跡や産卵した形跡がないか探します。産卵した形跡があれば、そこに「テッキン」と呼んでいる棒を刺して卵のある場所を探します。場所が分かれば砂を掘って卵を3つだけ丁寧に取り出し、産卵から何日が経過しているのかを調べてから丁寧に埋め戻します。埋め戻したら他の目印となる場所から巣の場所を計測して終了です。 巣の位置を計測している様子 ・・・簡単に思えますよね。 簡単そうに書きました。 でも実際はとっても難しいんです!!!! アオウミガメの産卵した形跡は、必ずしも同じ形とは限らないので、まず産卵の形跡を探すことから難題です。カメの足跡が消えてしまっているとより難易度が上がり、集中して砂浜を歩かないと見落とすこともあるくらい難しい作業です。 さらに、産卵した形跡からお母さんガメがどんな動きをしたのか予測し、「テッキン」を使って砂の中に産み落とされた卵を探します。 卵探し中の先輩スタッフ 今の私は「このあたりに卵がありそう!」という予測が出来るように、経験値の積み重ねをしている最中です。産卵の形跡の大体の形から「まんまるタイプ」「縦長タイプ」「カーブタイプ」「ふわふわタイプ」などと名前を付けて、少しでも覚えやすいように工夫をしています。ちなみにふわふわタイプが一番の難関です。 「テッキン」は、スタッフ1人につき1本、ステンレス製の棒を持っています。 1本ずつちょっとした違いがあるスタッフのテッキン   この棒を砂に刺し、砂の感覚で卵のある場所を探します。これもとっても難しいです。 木の根や石に阻まれて思うように刺せなかったり、卵はないのに似た感覚の場所があったりと非常に難しいです。また、テッキンで砂の中の卵を割らないよう細心の注意を払う必要があるため、とにかくあちこち刺せばいい!ということでもないのです。 やっと見つけた卵は、卵の向きが変わらないように注意して観察します。産卵から1日目の卵は全体的にピンク色で、表面にやや濡れた感触があります。産卵から14日目の卵は全体的に白く、やや乾燥していて殻がしっかりした厚みのある印象になります。実際の卵を見てみると、上のほう一部分だけ白くなっていることが多く、この白い範囲から産卵日を推察します。初めて産卵調査に行った時には1日目の卵を5日目と言ってしまったり、2日目と3日目が区別できなかったりと、事前の想像以上に難しい作業でした。 卵をじっくり観察。 これは1日目の卵でした。 とにかく難しいと何度も書いてしまいましたが、そのくらい難しい作業です。一緒に調査に行く先輩スタッフを見ていると、たくさんの産卵や卵を見てきた経験値の高さが重要なんだなと実感します。私も少しでも早く追いつけるように、ひとつの経験も無駄にしないよう頑張りたいと思います。 調査は難しいことも多いですが、ウミガメたちのことをたくさん知ることのできる貴重な機会でもあり、学ぶことはとても多いです。 今年の小笠原のウミガメたちはこの夏、どんな姿を見せてくれるのでしょうか。とても楽しみです!

新人スタッフ奮闘記(その⑥)2022-05-31T13:36:50+09:00

【けろにあぶろぐ #6】イルカの骨を眺める ② ~ヒレの骨~

2022-06-13T16:07:09+09:00

前回の記事はこちら ⇒ 【けろにあぶろぐ #5】イルカの骨を眺める ① ~展示館のハシナガイルカ~ 海への生活へ適応したイルカやクジラたち。彼らの祖先の登場は遡ることはだいたい5000万年前。ちょうど恐竜が絶滅し、約1500万年経った後にその頭角を現し始めました。 現在では「パキケトゥス」が直接の祖先ではないにしても、最初期の鯨類であることは長年の研究によって明らかになっています。 オオカミほどの大きさだったと言われているパキケトゥス。 陸をとことこと歩いていた彼らから、大海原を駆け泳ぐまでになったわけですから、体の形態を大幅に変える必要がありました。 そして陸を起源に持つ彼らのヒレには、ちゃんと指の骨がついています。 機能は違えどイルカとヒトのヒレ・前腕の骨は同じ構造を持ち、これを「相同器官」(起源は同じだが現在は働きが異なる器官のこと)といいます。 地上を歩く「肢」から、水中で有利な「ヒレ」へと変化。ふむふむ、なるほど非常に理にかなった進化だな、とうなずけますね。   しかし私は最初イルカの指の骨を見た時どこか違和感を覚えました。   そう!「指の骨が多い」のです!   犬や猫も、他の哺乳類もそれぞれの指の骨の数は3本ほど。 驚くことにイルカは種類によっては中指が10本以上あるものもあり、この「指の骨がいっぱいある」状態を「指骨過剰」というそうです(樽, 2014) 海洋センターに展示されているハシナガイルカの骨格の2本目の指にも8本の骨が確認できます。   調べてみると、先端の骨1~2本は個体差があるとか(樽, 2014)。加えてイルカは個体によって胸椎や腰椎(胸と腰の骨)の数もまちまちで (Miyazaki, 1978; Marchesi et al., 2016)、指の骨の数が多少違っても不思議ではなさそうです。 何本も何本も指の骨があるヒトを想像すると少し気味がわるいですね。イルカは指を曲げることができないので、ぐねぐねすることはないですが、、、。   ですが、なぜこんなにも指の骨が多いのか?   Fedak and Hall (2004) によると、この「指骨過剰 = Hyperphalangy」は 二次的に水中へと適応した動物相にしか見られないそう。 現在は絶滅しましたが、「ジュラシックワールド」で有名なあの「モササウルス」や「映画ドラえもんのび太の恐竜」でおなじみ、「ピー助」が属する「プレシオサウルス」の仲間も、みんなこの「指骨過剰」が顕著です。そして全ての種で共通して、四本肢である陸生起源の祖先を持ちます。   「指骨過剰」の面々たち   しかしヒレ状の肢と指骨過剰には必ずしも絶対的な関係があるわけではないようです。 同じく海に棲息し、ヒレ状の肢を持つウミガメやアシカには、モササウルスやプレシオサウルスのような無数の微小な指の骨があるわけではありません。 実は現在のところ、指骨過剰とヒレ状の肢の因果関係は明らかになっておらず、「水中に生活の場を移した動物によく見られる」ということだけがわかっています (Fedak & Hall, 2004)。 ただ、陸生の動物相にこの特徴が見られないという事実は、海中では指の骨の多さが生存上有利だったということが推測されます。 指骨過剰は、現存する鯨類のハクジラとヒゲクジラ2つのグループで独立して獲得された形質(クジラとイルカの共通の祖先の指の骨が多かったわけではなく、2つのグループに分かれた後、指の骨が多くなった)だという事実も (Fedak & Hall, 2004)、それがいかに有利かということを物語っています。     いかがだったでしょうか? 大昔に棲息していた生物と共通点があったなんて、動物の世界はまだまだわからないことだらけですね。 では次回のブログでお会いしましょう!     参考文献 Fedak, T. J., & Hall, B. K. (2004). Perspectives on hyperphalangy: Patterns and processes. Journal of Anatomy, 204(3), 151–163. https://doi.org/10.1111/j.0021-8782.2004.00278.x Marchesi, M. C., Pimper, L. E., Mora, M. S., & Goodall, [...]

【けろにあぶろぐ #6】イルカの骨を眺める ② ~ヒレの骨~2022-06-13T16:07:09+09:00

新人スタッフ奮闘記(その⑤)

2022-04-30T08:56:38+09:00

みなさんこんにちは! 海洋センター新人スタッフのしみずです。 新人といえど、入社後半年を迎え、新人感が薄れてきてしまった気がします。が、まだまだフレッシュに頑張りたいと思います! この春から新学年や新社会人、新しい環境になった皆様、あまり変わらないよ~という方も一緒に頑張っていきましょう!   すっかり夏の陽気の小笠原。 ついに、アオウミガメの産卵シーズンが始まってきました!私にとっては初めての産卵シーズンです! ここ数日、島内の皆様のご協力によって毎日のようにアオウミガメの産卵情報が寄せられています。こういった情報を基に、海洋センターでは産卵調査に行くのですが・・・ 別の作業で忙しかったり、コロナ禍の煽りを受けたりと、私自身は1度も調査に行けていません。早く調査に行って、母ガメの大きな足跡や砂を掘り返した跡などを実際に自分の目で見てみたいな~~と思うばかりです。       最近の業務といえば・・・ ウミガメのパピーウォーカープログラム関連の業務が多いですね!   そもそもどんなプログラムなのかをご紹介します。 パピーウォーカーとは、盲導犬候補の子犬を生後2か月ごろから1歳ごろまで育成するご家庭の方を指す言葉として広く使われています。 盲導犬ではありませんが、毎月お送りするメールマガジンで放流までの約一年間の成長を見守っていただきます。ご参加の皆様には子ガメの命名もしていただき、放流の様子を撮影した動画をお送りするという長期プログラムです。 実は最近、2021年の夏から皆様に見守られて大きく成長した子ガメたちのうち60頭ほどの放流を行いました!   放流前から、どの個体を放流するか考え、放流前に必要な標識付けや身体計測などの作業を行いました。イチから自分で考えて放流することや、一度にたくさんの子ガメの放流をすることが初めてだったので、たくさんの反省点はありますが、なんとか無事に放流することができました。 毎月、メールマガジンでお話している皆様の思いが詰まった子ガメということもあり、たっぷりの愛情と大人になってまた再会できることへの願いが伝わったように感じられ、とても良い経験を積むことができました。反省点はまた6月ごろに行う放流に活かしていければと思います! 放流の様子はスタッフ・ボランティア総出で撮影し、現在は絶賛編集作業中です。 パピーウォーカーにご参加の皆様はどうぞお楽しみに!! (放流時の撮影の様子。陸上と水中から撮影します)   また、2022年度のパピーウォーカー募集も始まり、そちらの受付作業も行っています。 宣伝ですが(笑)パピーウォーカーにはこちらのページからお申込みいただけます。 →パピーウォーカー2022受付サイト   ご興味があればぜひ参加してみてくださいね!   最近嬉しかったことも書いておきますね! この4月から、展示館で販売しているTシャツの発注担当になり、先日初めて発注を行いました。   発注するときは 「このデザインにはこの色かな?」 「せっかく担当者が変わったのだから、今までにはなかった色も追加したい」 「何色が人気なんだろう・・・?」 「各サイズ何枚発注しよう?」 「そもそも今あるあの色は、いったいどの品番の色なんだろう?」 と、考えすぎて、悩みすぎてしまい、発注作業には数日を要しました。   ですが、そんな苦労も実際に届いた商品たちを見れば忘れてしまうほど、素敵なTシャツたちが届きました! 1番人気のクジラTシャツには欠品になっていたサイズの再入荷と新色を追加、定番の海洋センターTシャツにも新色を追加しました! また、久しぶりの販売となった「おつかめさま~」Tシャツにも新色を加えて再販売しました!   入荷作業を手伝ってくれたボランティアスタッフのみんなからも大好評で、 「この色かわいい~!」 「このデザインとこの色合いますね」 「(すでに持っている)人と被らないのが嬉しい」 と喜び、そして発注担当を褒めて(お世辞の可能性は考えないことにします!)早速購入してくれました!みんなありがとう~~!! (早速「おつかめさま~」Tシャツで記念撮影)   現在、展示館は島内で新型コロナウイルスの感染が拡大している状況を鑑み臨時休館しております。再開した際にはぜひTシャツも見に来てくださいね!     今月は以上です! 来月も嬉しいことが書けるように頑張っていきたいと思います! それではまた来月お会いしましょう!

新人スタッフ奮闘記(その⑤)2022-04-30T08:56:38+09:00

【臨時休館のお知らせ】

2022-04-28T17:14:07+09:00

父島内での新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、 小笠原海洋センターでは当面の間、展示館を臨時休館いたします。 なお、屋外のウミガメ水槽は8:00~17:00の間ご覧いただけます。 ウミガメのおやつは無人販売にて継続いたしますが、その他プログラム・商品の販売は行いません。   また、展示館で販売している商品の一部は下記オンラインショップでもご購入いただけます。 ELNAサポートショップ ELNA(エバーラスティング・ネイチャー)は、小笠原海洋センターの運営団体です。 ぜひご利用くださいませ。   さらなる感染拡大を防ぐため、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。  

【臨時休館のお知らせ】2022-04-28T17:14:07+09:00
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