みなさんこんにちは!
小笠原海洋センタースタッフのしみずです。

すっかり時間が経ってしまいましたが、あけましておめでとうございます!
昨年はたくさんのあたたかいご支援をいただき、無時に調査・研究活動を継続することが出来ました。厚く御礼申し上げます。
本年も引き続き、ウミガメ保全活動・ザトウクジラ調査などの活動を継続してまいります。もちろんブログやSNSでの発信も頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします!

2022年は新型コロナウイルスが小笠原でも流行し、なかなか思うように調査に行けなかったり、お客様の数が少なかったりと、海洋センターにとっては少し大変な1年でした。一方で、SNSでは過去最大の反響をいただいたり、新商品が好評だったり(コチラが大好評でした)と、嬉しい出来事もたくさんありました。

最近の出来事といえば、やはり『びいなすネイチャープロジェクト』のびいなすちゃんを放流したことでしょうか。このプロジェクトは、ぱしふぃっくびいなすという客船と共同で行っていたプロジェクトで、いつかびいなすちゃんを放流して生態解明するという目的でこれまで実施してきました。

びいなすちゃんは私が就職したときにはすでに飼育していたので、毎日水槽にいるのが当たり前でした。そんな子を放流するのは寂しさもありますが、ここまで大きく立派に成長したのだから海へ行ってもきっと大丈夫という自信を持って送り出すことが出来ました。それでもやはり、びいなすちゃんがいた水槽を見るたびに「大丈夫かな、元気かな」と心配してしまいます。これが親心でしょうか・・・

水槽にいたころのびいなすちゃん

今回放流したびいなすちゃんには発信機を装着しています。
まだ分からないことが多いのウミガメの中でも、より分かっていないのが生まれてから数年の子どものカメたちの行動です。今回は4歳のびいなすちゃんに発信機を背負って海で生活してもらい、少しでも多くの情報を得られることを期待しています。
発信機による追跡の様子は、HP上で公開しています。24時間ごとの更新ですが、衛星を使用した追跡のために衛星通過のタイミングによっては更新されない日が続くこともあります。
現在までは順調に更新されています!(一度ニュージーランド付近まで行っていますが、さすがに考えられないので、発信機のエラーかと思います)びいなすちゃんは基本的に父島周辺をうろうろしているようです。
皆さまもぜひ一緒にびいなすちゃんの行く先を見守ってください!→びいなすちゃんの回遊経路マップ

今回装着した発信機は、手のひらに乗る小さなサイズ。甲羅の大きさが50㎝ほどのびいなすちゃんに装着するには「ちょうどいい」大きさでした。

装着の際にはちょっと特殊な接着剤を使います。完全に硬化するまでに時間がかかるもので、放流の前日に約3時間かけて装着を行いました。もう少し早く終わるかな?と思っており、硬化したころにはすっかり暗くなってしまいました(笑)

放流当日の朝、発信機は無事かな?と心配していましたが、水槽の中で発信機を背負ったままいつも通りに過ごしていたようでまずはひと安心。最後の朝ごはんを食べたあと、午前中のうちに船に乗り沖へと向かいます。船の上でも激しく暴れることはなく、落ち着いて過ごしていたびいなすちゃん。4年間海洋センターで過ごした余裕が感じられました。

びいなすちゃんに「いってらっしゃい、頑張ってね」と声を掛けると、いよいよ放流の瞬間がやって来ます。声を掛けて何気なくびいなすちゃんの頭に触れた時には、思わず涙が出そうでした。しかし、泣いている暇はなく、放流の瞬間を動画に収めるべく、船のはしごを海中に降ろし、足を掛け懸命に手を伸ばしてカメラをセット。年末の海に膝下まで浸かりながら、ぱしふぃっくびいなすにご乗船された皆さまにびいなすちゃんの雄姿を届けられるよう、必死に手を伸ばします。心配になって何度も録画ボタンが押されていることを確認してから海中にカメラを入れ、頼むからちゃんと映っていてくれ~~!と念じていました。

放流されたびいなすちゃんは突然の大海原に驚いたのか、最初の数秒はスタッフの手から離された体勢のまま固まっていました。ゆっくりと泳ぎ出し船から離れると、息継ぎの度に船の方向を確認するような動きを見せ、びいなすちゃんも名残惜しいと思ってくれたのかな?なんて幸せな思い込みをさせてくれました。

しばらく見守り、びいなすちゃんが完全に船から離れたことを確認したあと、私たちは港へ戻りました。

一生懸命に撮った動画は、先ほどのびいなすちゃんのページ内やYouTubeで公開しています。
ぜひご覧ください!→【びいなすネイチャープロジェクト】「びいなすちゃん放流!」