小笠原海洋センターでは今年第一号の子ガメsがふ化しました!
画用紙くらいの厚さしかない小さな手足をバタバタさせる姿に、スタッフTSも心を打たれるばかりです。こんな小さいのに海岸をせっせと歩いて、大海原へと旅立っていくなんて、、、。
親の愛情を一身に受けてぬくぬくと育つ我々とまるで違う生き物なんだなと、改めて思う今日この頃です。
わさわさ出てきます。
丸いお顔やお目め、体に不釣り合いなくらい大きな顔は、我々人類もウミガメも赤ちゃんの共通項なようです。
さて、そんなとっても小さな彼らですが、最近の研究では「どうやら鳴いている・発声しているらしい」ということが明らかになってきています。長らくウミガメを含むカメ類は「耳があまり聞こえず、あまり喋らない生き物」と考えられてきました。
カメやウミガメは哺乳類のような耳介(耳の出っ張り)を持たず、音に良く反応しているとは言い難いです。私たち小笠原海洋センターのスタッフも、夜間パトロールで産卵のため浜に来たお母さんウミガメをよく見ますが、あまり物音に気付きません。また、犬や猫のようにワンワン、ニャンニャン発声する様子もなく、こうしたカメの形態や生態が、彼らが「静かな生き物たち」と言われる所以だとか (Charrier et al., 2022)。特にカメ類は外部からの情報の大半を嗅覚及び視覚に頼っているとされ(Ferrara et al., 2019)、「音」に関するカメの研究が為されなかったのもうなずけます。
しかし、ここ10年ほどの研究によると、カメは従来考えられていたよりも「音」を出していることがわかってきました。陸生、水生合わせて少なくとも50種以上のカメが何らかの形で音を発し、敵対的な行動、交尾時などに多いそうです。ついには親子間での音のコミュニケーションまでが「音」で交わされているという報告も!(Ferrara et al., 2019)
2013年に発表された「カメ類における子ガメふ化後の親子間の鳴きかわしについて / Turtle Vocalizations as the First Evidence of Posthatching Parental Care in Chelonians」と大々的に題された論文では、南アメリカに棲息する「オオヨコクビガメ」のとても興味深い行動について研究がなされています。
なんでもこの実験では、オトナのメスのオオヨコクビガメがいる水槽に140匹の子ガメを放ち、双方の行動を観察。カメから発せられる音をレコーディングしたそうです。するとなんと、子ガメもオトナガメどちらも「音」を出し、オトナガメたちは子ガメに近づいていったではありませんか!
またオオヨコクビガメの子ガメを同種のオトナメスのオオヨコクビガメがいる水槽に入れたところ、子ガメたちは、メスのカメに近づき甲羅の上や、体にぴったりとくっついて休みだしたと書かれています。
また、自然界でオオヨコクビガメは子ガメがふ化するまで2か月ものあいだ、巣の近くの川でじっと過ごし、子ガメが出てくると一緒に泳いでえさ場まで旅をするそうです (Ferrara et al. 2013)。この時に、親子の間で「鳴きかわし」が行われていると予想されます。
彼らはこれを「カメ類で初めて発見された親子間の音声コミュニケーション」としています。
いかがでしょうか?
ここに挙げたのは一つの研究だけですが、彼らにも少なからず社会性があることはとても興味深い事実です。
事実、「従来考えられていたより、カメは様々な音を発する」と様々な文献でまとめられております。
その音がコミュニケーションに使われているのか、それともただの音なのかはもう少し研究が必要なところ。
そして我らがウミガメはというと、「音によってふ化を同調させる」などの推測が為されていますが、先に挙げた水生や陸生のカメのようにあまり詳しくはわかっていません。
かといってウミガメが「音」を出さないのかというと、そう単純でもないようです。
さて次回の「カメは鳴くのか?」コラムでは「ウミガメの音」について焦点をしぼってゆるっとお話していきます。
次の投稿で書けるかわかりませんが、それではまた、楽しみにしていてください!
参考文献