来る日も来る日も雨に降られ、予定が思うように進まない今日この頃。そんな雨をものともしないアオウミガメはこれから産卵のピークを迎え、センタースタッフT.S.も始めて肌に触れて感じるウミガメの生態に驚きが募るばかりです。
さて、「イルカの骨を眺める」コラムも第3回に突入しました。
「もっとウミガメのことも書いてくれ!」
とみなさまの声が聞こえてきそうですが、たまにはこういう記事もいいかなと、半ば自己満足的に記事を書いております。そんなスタッフT.S.ですが、今回もイルカの不思議についてゆるっと書いていきますので、最後までお付き合いいただければ幸いです。
前回の記事はこちら ⇒ 【けろにあぶろぐ #6】イルカの骨を眺める ② ~ヒレの骨~
生活環境を陸から海へと変えるということは、生物にとって大きなボディプランの改変を余儀なくされ、イルカも例外ではありません。
指の骨の数が哺乳類にしては多いとか(前回記事参照)、頭に脂肪組織が詰まっているとか(前々回記事参照)。
水族館やドルフィンスイムで人気者のイルカですが、フタを開けるとけっこう変わった生き物だなと私は感じます。
そんな風変りなイルカさんですが、首の骨も奇妙な形をしています。
爬虫類であるウミガメを引き合いに出すのもどうかと思いますが、同じ海生動物であるウミガメの首の骨はこんな感じ。
ちなみにウミガメは頸椎が8個あり、人間と比べると1つ多いです。右の写真では5つ見えているので、残り3つは甲羅の中にフィットしています。
想像していたものより長いんじゃないでしょうか。
海洋センターの水槽掃除の時にウミガメたちが首を引っ込めるのも、この長い首のおかげですね。
対して、イルカさん。
右の写真の赤い丸で囲ったところが首の骨。
首短ッッッ!
え….
首短ッッッッッ!(大事なことなので2回言いました)
というかなんかもう、「ギュッ」となってて一個の骨みたいになってます。
なのですがイルカも哺乳類の仲間。キリンや人間と同じで、ちゃんと首の骨は7つあります。
鯨類の第1頸椎(環椎)と第2頸椎(軸椎)は癒合していて、1つの骨みたいになってます (Perrin et al., 2017)。頸椎(けいつい)とは首の骨のこと。種によってまちまちですが、第3頸椎まで癒合しているものもいます。第3頸椎から第7頸椎は写真のように、薄っっっすい骨がミルフィーユみたいに連なっています。
ちなみにベルーガ(シロイルカ)やアマゾンカワイルカなどはこの頸椎の癒合が進んでいないため首をタテヨコナナメと、比較的自由に動かすことができます (Goel et al., 2021)。水族館などで体を縦にしながら首だけ飼育員の方を向くベル―ガを見たことがあるかと思いますが、これは首の癒合が進んでいない彼らだから為せる技なのです。
こんな調子で鯨類は、顔の大きさの割に非常に短い首の骨を持っていることが知られています。
大きなクジラも、愛らしいイルカも、首の骨が短いのは鯨類で共通の特徴なのです。
なぜこんなに首が短いのか?
色々文献を読んでいると、「泳ぎやすくなるために進化した」という答えにたどり着きます。
しかし、首が短いのと泳ぎやすいのとどう関係があるのか。
次回のブログではもう少し掘り下げて、ゆるっとお話したいと思います。
ではまた!
参考文献
Goel, A., Shah, A., & Gaikwad, S. (2021). A morphological analysis of the cervical spine of the dolphin. Journal of Craniovertebral Junction and Spine, 12, 72. https://doi.org/10.4103/jcvjs.jcvjs_9_21