ザトウクジラ調査とは?その1

2024-02-27T16:20:34+09:00

みなさまこんにちは! 海洋センタースタッフのしみずです。 小笠原もすっかり寒くなり、島の主役は気付けばアオウミガメからザトウクジラに交代。クジラ人気は島内でも非常に高く、ウェザーステーションを始めとする展望台にはクジラ探しをする人の姿を多く見かけるようになりました。 ウェザーステーションからの夕陽。眼下にはザトウクジラが観察できます。 海洋センターは島内では「カメセンター」と呼ばれることが多いからか、意外と私たちが『ザトウクジラ調査』を行っていることは知られていないような気がします。今回はそんな調査についてお話します! ややこしい歴史の話からスタートしてしまいますが、そもそも小笠原でのザトウクジラ調査は、1988年にカナダから2人の研究者が来島して始まりました。同時期に小笠原ホエールウォッチング協会(OWA)の設立、小笠原海洋センターでの調査が始まります。 2014年を最後に、資金不足、人手不足などにより、事業の規模を縮小して調査をせざるを得ない状況が数年続きました。 しかし、2017年~2019年は本格的ではないものの、年間数回のクジラ調査を実施していました。そして2020年から本格的な調査を再開しました。この再開にあたっては、企業からの助成金獲得により資金の問題を解決できたこと、そしてなにより、スタッフKさんが「このまま調査データが埋もれてしまうのはもったいない!これだけのデータを持っている海洋センターがやらなければ!」という熱意がありました。 2020年からは小笠原ホエールウォッチング協会(OWA)との協働で調査を実施しています。これまで小笠原で確認されたザトウクジラのデータベースがより充実し、調査研究がの幅が広がり、国内外との共同研究にもさらなる展開や成果が期待できるようになりました。 そんな『ザトウクジラ調査』は大きく2つの段階に分けることが出来ます。 ①沖に出てクジラの尾びれ写真を撮る ②撮った写真から個体の識別を行う 今回はこの①についてお話していきます! さて、「①沖に出てクジラの尾びれ写真を撮る」ですが、撮る箇所は「お腹側の尾びれ」です。 ザトウクジラは数回の息継ぎののち、頭を海底に向け、尾びれを高く上げて深く潜る『フルークアップ』という行動をします。フルークアップダイブと呼ぶこともあります。 フルーク(Fluke)とは尾びれのことなので、文字通り尾びれを高く上げることですね。国にとってはテイルアップと呼ぶそうです。 このフルークアップはザトウクジラだけでなく、小笠原の外洋で見られるマッコウクジラも行います。冬の時期は海が荒れることが多く、マッコウクジラのいる外洋まで行くことが難しいのですが、見比べてみると面白い発見があるかもしれませんね。 調査ではフルークアップの瞬間、クジラの背後につけた船上からカメラで尾びれを撮影します。そうするとお腹側の尾びれの写真を撮影することが出来ます。毎回しっかりと尾びれを上げるとも限らないうえに、いちど潜ると10~20分ほど潜っていることが多いので、少ないチャンスで確実に撮影することが調査では大切になってきます。 当然ですが、野生動物であるクジラが私たちの予想通りに行動してくれるわけではありません。クジラの位置や行動を予測しながらクジラの背後に回ることのできる、高い操船技術が求められます。さらに、揺れる船上で、しっかりとピントを合わせてシャッターを切るのは難しく、何度も経験を積むことが重要になってきます。陸上で撮影する場合には三脚などのカメラを安定させる道具が使えますが、常に揺れる船の上では使えないため、スタッフの体幹と技術(と根性)により、尾びれの写真を撮影しています。調査翌日のスタッフは、踏ん張る足や力の入りやすい肩付近の筋肉痛に悩まされるという噂も…… では、スタッフの汗と涙の結晶、一生懸命撮影した尾びれの写真を見てみましょう。 もちろん同じ「ザトウクジラ」という種類のクジラですが、尾びれにはそれぞれの個性があります。特にこのザトウクジラは尾びれの模様や、ふちのギザギザ(エッジ、と呼んでいます)に個性が現れやすく、尾びれを使った個体識別が世界中で行われています。 この個体識別を行うのが、先ほど書いた②の段階です。 長くなってしまいますので、②は次回のお楽しみに! 参考文献:「小笠原の捕鯨の歴史」三木誠

ザトウクジラ調査とは?その12024-02-27T16:20:34+09:00

みなさまからのプレゼント

2023-11-22T20:17:29+09:00

みなさまこんにちは! 小笠原海洋センタースタッフの清水です。 9月に入ってから特に、AmazonWishListを通じてたくさんのご支援をいただきました! この場をお借りして、深く御礼申し上げます。本来であればお1人ずつお礼を申し上げたいところですが、匿名でご寄付いただくことも多いためまとめてご紹介させていただきます。 まずはこちら! たまたま同じポーズになった子ガメがとっても可愛い写真ですが、注目していただきたいのはクッキングスケール、つまり重さを測る「はかり」です。 購入履歴を見る限り5年ほど使用したであろう右のはかりは錆が多く、途中でスイッチが切れたり重さがブレたりすることもしばしばありました。同じ商品とは思えないほどピカピカ、鏡のように光り輝くはかりが海洋センターに届きました。 このはかりはカメたちのゴハンの重さを測ったり、写真のように子ガメの体重を測ったり、ときには研究用の重要な薬品を測ったり、なんにでも大活躍します!ご支援いただきありがとうございました。 こちらも海洋センターで毎日使う道具、「ノギス」です!なかなか聞きなれない単語かもしれませんが、カメの身長を測るのにはとっても便利な道具です。(もちろんカメ以外でも、工具としていろいろ使われています!) 海水のかかる環境で毎日使っているとどうしても錆びてしまうので真水で洗い潤滑油を差してメンテナンスもしているのですが、気が付くと動くはずの部分が錆びついて動かなくなることもあります。こちらのノギスは大事な目盛りが錆びで読めなくなってきてしまっていました。 新品のノギスはピカピカで動きもスムーズ。使うのが勿体ないくらいですが、大切に使用させていただきます! こちらは調査で使うアイテムたちです。 ウミガメが産卵した場所を計測するため、また、一度計測した場所を再度割り出すために使うメジャー。東京都心の約2倍の紫外線量とも言われる小笠原において人間的に必須アイテムの日焼け止め。調査中や作業中、気が付いたら増えている切り傷に対応するための防水絆創膏。 どれも人間にとっての必須アイテムで、直接ウミガメに使うものではありませんが、こうして活動をご支援していただけるのは非常に嬉しいです。ありがとうございます! 最後はこちら。 真新しいデッキブラシをたくさんご支援いただきました。 現在海洋センターで飼育しているウミガメは402頭。水槽の数が30個。これだけの数のウミガメと水槽を掃除していると、デッキブラシが壊れるペースもなかなかのハイペースです。みなさまにご支援いただけるおかげで、綺麗な水槽でウミガメを飼育することが出来ます。 実は水槽が汚いと、ウミガメは皮膚の病気になりやすいので、綺麗な水槽を維持するのは見た目の良さだけでなく健康にウミガメを飼育するためにも重要なんです。 ん?良く見ると左側のボランティアの手にはバナナチップスも! こうしたおやつのおかげで、ウミガメの飼育作業や調査、たくさんの業務を頑張ることができます! 完全にスタッフ向けのおやつもご支援いただけるとは・・・みなさまの懐の広さに支えられています。ありがとうございます! AmazonWishListからのご支援、いつも本当にありがとうございます。 ご支援、ご寄付をいただけるおかげで私たちは小笠原でウミガメ保全、調査研究の活動が出来ています。WishListからのご支援は温かいコメントが付いていることも多く、プレゼントのような気持ちでいつも受け取っています。 なお、AmazonWishListからのご支援も「寄附金控除」の対象となり、「寄附金受領書」の発行が出来ます。ご希望される場合はコメント欄にその旨、また必要な情報をご記入ください。 引き続き、みなさまからの温かいご支援をお願いいたします。もうすぐ始まるクジラシーズンに備えて、調査で必要なサンプル管などが追加されています。 ぜひご支援お願いいたします! リンクはコチラ→海洋センターのAmazonWishList  

みなさまからのプレゼント2023-11-22T20:17:29+09:00

新人スタッフ奮闘記(その⑨)

2022-10-03T15:27:37+09:00

みなさんこんにちは! 小笠原海洋センター新人スタッフのしみずです。 今年の夏、皆さまにとってはどんな夏でしたか? 私にとっては小笠原で迎える初めての夏。調査の合間や休日に海で泳ぎ、時にはイルカと一緒に泳ぐことも出来ました。今年の夏は海況が良くない日が多く、なかなか海には出られませんでしたが、それでもたくさんの魚たちと出会えた充実した夏でした。 夏が長い小笠原ですが、朝晩は冷え込み長袖が欠かせなくなってきました。小笠原では台風が相次いで接近していましたが、大きな被害が出ることもなく、カメたちも元気に過ごしています。 海洋センターの夏は、夜間パトロールに夜間放流会、大村海岸の卵の保護、産卵調査にふ化後調査、稚ガメ(赤ちゃんガメ)の入槽、そしてたくさんのお客様、と盛りだくさんでした。戸惑うことや上手く出来なかったこと、失敗もありました。1年目の反省として、めげずに来年もまた頑張りたいと思います! 今回のブログでは、そんな1年目の夏に撮影した写真たちをたくさんお見せしたいと思います。可愛い赤ちゃんガメの写真も、実はSNSに載せきれないくらいあるんです。それではひとことコメントとともにお楽しみください! ふ化場での1枚。その日の夜には脱出(地上に出てくること)をしそうなカメたちが見えていました。   地上に脱出してきた赤ちゃんガメたち。ふ化場ではそれぞれの巣ごとに管理するためネットで囲っています。 朝出勤するとネットの中にたくさんの赤ちゃんガメがいる光景は、何度見ても嬉しい気持ちになります。   脱出直後の赤ちゃんガメ。手のひらにすっぽり収まるくらいの小ささです。     太陽の光に照らされる赤ちゃんガメ。可愛さ5割増しです。       ウミガメですから当たり前なのですが、初めて水に入ったその瞬間から上手に泳ぎます。 カメラを見下ろして、ちょっと警戒しているような表情がお気に入りの一枚です。 1歳の子ガメとご対面。気にせずパタパタし続ける赤ちゃんガメと、ちょっと近付いてきては離れることを繰り返した1歳の子ガメ。なんだか不思議な関係性があるようです。 昨年に引き続き父島に来てくれた「探巣犬」のケンちゃん。 スタッフ、ボランティア、島民、みんなに愛されるアイドルです。 もちろん卵探しでは大活躍! 人間が見落としていた巣をいくつも見つけてくれました。 最近の子ガメも1枚。移動のための容器を準備している最中、少し待ってもらっていたのですが、、、 ちょっと不服そうな顔をしながら、大人しく待っていてくれました。   以上です! いかがでしたでしょうか。 カメたちの可愛さで皆さまの心が少しでも癒されていたらいいな、と思います。 それではまた次回!

新人スタッフ奮闘記(その⑨)2022-10-03T15:27:37+09:00

新人スタッフ奮闘記(その⑦)

2022-07-01T08:27:14+09:00

みなさんこんにちは! 小笠原海洋センタースタッフのしみずです。 全国的に梅雨明けし、いよいよ夏本番ですね!小笠原はひと足もふた足も早くすでに真夏の陽気です。気を抜くと「暑い」しか言えなくなるので困っています。でも本当に暑いんですよ・・・恐るべし小笠原の夏・・・ でも、ボニンブルーの空と海はとても綺麗です!!! 今回のブログでは「夜間パトロール」について紹介しようと思っていたのですが、なんだか産卵のピークは過ぎてしまったような気も・・・ でも、めげずにご紹介させてください!! 「夜間パトロール」、通称「夜パト」は、その名の通り、夜の大村海岸をパトロールします。 大村海岸には、産卵のために多くのお母さんガメが上陸してきます。そんなお母さんガメの産卵を見守り、産卵した場所を周辺の目印から計測しておくことで光害対策として行っている卵の保護に役立てています。 また、お母さんガメ協力のもと標識放流も行います。 上陸している間に両後肢と左前脚に標識を付け、甲羅の大きさを計測してから海へ帰します。この個体識別を行うことで、様々な情報を得ることができるんです! 例えば・・・ アオウミガメのメスは4年に1回のペースで産卵すると言われています。では、海水温が上昇していると言われる近年、影響を受けて産卵の間隔は変化しているのでしょうか。 この疑問を解決したいと思った時に標識があるととても便利です。 以前、産卵のため上陸したときの標識が付いていると、その時の記録を遡ることができるので何年振りの産卵なのかを確認することができます。過去に何度も上陸している個体の場合、その個体の産卵間隔を20年以上にわたり確認できることも!ずっと活動が続けられてきたからこそ、こうしたデータを多く得られています。 ちなみに、今シーズン上陸した個体で過去のタグを確認すると、前回の確認が2017年の個体と2019年の個体が多いです。一般的に言われる4年ではなく、5年と3年の間隔ですね。ウミガメの謎は深まるばかりです。 夜パト中には色々なお母さんガメに出会います。せっかくなので、個人的に印象的だったカメを2頭ご紹介します。 【その1】 30分前に確認したカメが付近に見当たらず、海へ帰った形跡もなく。いなくなった!?と焦って必死に探したところ、砂浜から100m以上離れた場所まで進んでしまっていました。産卵場所を探しているうちに迷子になってしまったのでしょうか。1時間ほどかけて誘導し、なんとか海へ帰すことが出来ました。 【その2】 良い産卵場所に出会えなかったのか、ひと晩で5回も上陸してきたカメ。その日3回目の上陸のころにはもう友達のような感覚で「また来たの~!がんばって~!」と声をかけてしまいました。翌日も上陸するも産卵できず、さらにその翌日、3日目にそのカメに会った時は「今日こそ産卵して帰りたいね~」と声を掛けました。その日、多くの観光客の方に見守られながら無事に産卵することができ、なんだか私まで嬉しかったです。 いかがでしたか?こうして書きながら思い返すと、カメの産卵に向けた熱意と人間臭さにちょっと笑えてきます。(笑) 夜パト中には、ウミガメの産卵行動を見守ることもあります。夜パトの度に、というわけではないのですが、見たときには毎回ウミガメの器用さに感心してしまいます。目で見ながらではなく、後肢の感覚だけを頼りに穴を掘り、卵を産み埋めていく姿にはウミガメという生物の強ささえ感じます。 みなさんも産卵行動見学の際には、海洋センタースタッフやツアーガイドの指示に従ってそっと見守ってあげてくださいね。 夏真っ盛りの小笠原。7月はどんなウミガメに出会えるのでしょうか。 来月もお楽しみに!  

新人スタッフ奮闘記(その⑦)2022-07-01T08:27:14+09:00

新人スタッフ奮闘記(その⑥)

2022-05-31T13:36:50+09:00

みなさんこんにちは! 小笠原海洋センター新人スタッフのしみずです。 小笠原はすっかり夏、半袖でも暑いほどの毎日です。それでも日焼け対策のため長袖で頑張っています! お風呂上がりにはアイスが欠かせず、ダイエットに支障が出そうです。 さて、夏の小笠原といえば、アオウミガメの季節です!!!!! 待ちに待った産卵シーズンが本格化してきました。 産卵シーズンは、私たち海洋センタースタッフにとっては調査シーズンでもあります。 「産卵調査」と「夜間パトロール」を主に実施していますが、今回は産卵調査を中心にお話していきたいと思います。 産卵調査の流れを簡単にご説明します。 まず、車や船で砂浜に行き、カメの足跡や産卵した形跡がないか探します。産卵した形跡があれば、そこに「テッキン」と呼んでいる棒を刺して卵のある場所を探します。場所が分かれば砂を掘って卵を3つだけ丁寧に取り出し、産卵から何日が経過しているのかを調べてから丁寧に埋め戻します。埋め戻したら他の目印となる場所から巣の場所を計測して終了です。 巣の位置を計測している様子 ・・・簡単に思えますよね。 簡単そうに書きました。 でも実際はとっても難しいんです!!!! アオウミガメの産卵した形跡は、必ずしも同じ形とは限らないので、まず産卵の形跡を探すことから難題です。カメの足跡が消えてしまっているとより難易度が上がり、集中して砂浜を歩かないと見落とすこともあるくらい難しい作業です。 さらに、産卵した形跡からお母さんガメがどんな動きをしたのか予測し、「テッキン」を使って砂の中に産み落とされた卵を探します。 卵探し中の先輩スタッフ 今の私は「このあたりに卵がありそう!」という予測が出来るように、経験値の積み重ねをしている最中です。産卵の形跡の大体の形から「まんまるタイプ」「縦長タイプ」「カーブタイプ」「ふわふわタイプ」などと名前を付けて、少しでも覚えやすいように工夫をしています。ちなみにふわふわタイプが一番の難関です。 「テッキン」は、スタッフ1人につき1本、ステンレス製の棒を持っています。 1本ずつちょっとした違いがあるスタッフのテッキン   この棒を砂に刺し、砂の感覚で卵のある場所を探します。これもとっても難しいです。 木の根や石に阻まれて思うように刺せなかったり、卵はないのに似た感覚の場所があったりと非常に難しいです。また、テッキンで砂の中の卵を割らないよう細心の注意を払う必要があるため、とにかくあちこち刺せばいい!ということでもないのです。 やっと見つけた卵は、卵の向きが変わらないように注意して観察します。産卵から1日目の卵は全体的にピンク色で、表面にやや濡れた感触があります。産卵から14日目の卵は全体的に白く、やや乾燥していて殻がしっかりした厚みのある印象になります。実際の卵を見てみると、上のほう一部分だけ白くなっていることが多く、この白い範囲から産卵日を推察します。初めて産卵調査に行った時には1日目の卵を5日目と言ってしまったり、2日目と3日目が区別できなかったりと、事前の想像以上に難しい作業でした。 卵をじっくり観察。 これは1日目の卵でした。 とにかく難しいと何度も書いてしまいましたが、そのくらい難しい作業です。一緒に調査に行く先輩スタッフを見ていると、たくさんの産卵や卵を見てきた経験値の高さが重要なんだなと実感します。私も少しでも早く追いつけるように、ひとつの経験も無駄にしないよう頑張りたいと思います。 調査は難しいことも多いですが、ウミガメたちのことをたくさん知ることのできる貴重な機会でもあり、学ぶことはとても多いです。 今年の小笠原のウミガメたちはこの夏、どんな姿を見せてくれるのでしょうか。とても楽しみです!

新人スタッフ奮闘記(その⑥)2022-05-31T13:36:50+09:00
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